ひねくれ作家様の偏愛
「は?なんです、出し抜けに」


「こみ入った話だから……観覧車の中で話そう」


海東くんは困惑げに、それでも頷いてくれた。



土曜の夜の観覧車は、降り出した雨のせいもあり、五分と待たずに乗ることができた。

雨に遮断された小箱の中で海東くんと向かい合う。
ふとすれば無言になりかねない。
一周はさほど長くはないだろう。きちんと言わねば。

私は精一杯の気持ちを込めて、まず彼に頭を下げた。


「海東くんごめんなさい」


「何に謝ってるんですか?実家にまで押しかけたこと?」


「それもあるけど……」


「母が余計なことを言ったようですけど、あの人はお喋りなんです。無視してください」


海東くんの声音はぶっきらぼうで、視線は私ではなく、観覧車の窓を叩く雨を見ている。細く筋を引いて流れ落ちる雫を目で追っている。
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