ひねくれ作家様の偏愛
私たちはしばし黙る。
ゆるゆると登っていく観覧車。
雨が観覧車内の湿度も上げていく。

言わなくちゃ。
ずっと逃げてた言葉。

海東くんをまっすぐ見据え、背筋を伸ばす。


「海東くん、ずっときみが好きでした」


私の言葉に海東くんが肩を揺らすのが見えた。


「我儘でひねくれ者で、私のことなんか下僕扱いで。最初は嫌いだったよ。作品のために我慢して担当してた。でも、きみの持つ深く魅力的な世界観と、きみの人間性が切り離せないものだともわかってた。
……気付いたら、作品だけじゃなくて、君に惹かれてた。きみの生み出す世界を一番近くで見ていたいと思うようになってた」


海東くんの瞳を見つめる。
切れ長の美しい瞳。きっと間近で見るのはこれが最後。


「嫌いな人とあんなことできない。私はきみが好きだから、抱かれた。ごめんなさい。私は本当に卑怯。4年前は『アフターダークのため』って理由づけして、きみと抱き合った。この前は『どうせ今だけの恋』って決めつけて、平気な顔できみに背を向けた。
自信がなくて自分の気持ちにいつだって蓋をしてきた」


涙がこぼれた。
桜庭千弥、一世一代の告白だ。


「だけど、きみが好き。海東くんの全部が好き」

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