ひねくれ作家様の偏愛
「ありがとう、海東くん」


「好きです、千弥さん」


私の手を握ったまま、大きな声で海東くんが言った。

周囲には観覧車のスタッフやこれから乗るお客さんが多くいる。
海東くんは真っ赤になる私を見つめ、もう一度言った。


「好きです。一生かけて、俺の持てるもの全部をあんたに捧げます。だから、黙って俺のものになってください」


「海東くん!」


私は慌てて彼の手を引っ張り、出口へ走った。
逃げ出したけれど、きっと周囲には聞こえていただろう。彼の愛の告白。


「……あんなところで」


「何が悪いんですか?俺はこれから言いふらしますよ。桜庭千弥は俺のものだって」


ぬけぬけと言う彼の言葉は、私から離れる気がないという証明のようなもの。
私の不安を埋めたい彼の優しさだ。


「ごめんなさい。私がバカだった。きみにこんなに愛してもらってるのに」


海東くんが私の頬にキスした。
再びこぼれた涙を舌で受け止められ、驚いた私は後ろに飛びすさった。せっかくにぎった手も遠慮なく振りほどいて。

海東くんがおもいっきりあきれた顔で私を見ている。
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