ひねくれ作家様の偏愛
それから顎を仕事場のドアに向かってしゃくって見せる。


「部屋に出来てますよ」


ほほう、自分で取りに行けと。
そういうことですか。

例の窓のない仕事場に入るとPCのキーボードの上にプリントアウトされた原稿があった。
恋愛シミュレーションらしいタイトルが表紙に書きなぐられていた。
横にデータの入ったフラッシュメモリもある。

私はそれを手にリビングに戻る。


「飯田に渡すね。連絡が来るから、改めて打ち合わせして」


「こんな安っぽいアプリゲームのシナリオ、直すとこなんてないでしょう」


担当だろうが口出しさせないのは、彼の流儀。
海東智は自分の書くものに絶対の自信を持っている。

私はわからないようにため息をついた。
社内中が彼を持て余していると、海東くんは知っているだろうか。


「ところでコレはどこに置けばいいのかな」


私はスターバックスの紙袋を持ち上げて見せた。
中には海東くんのリクエストで本日のコーヒーがふたつ。

< 3 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop