ひねくれ作家様の偏愛
今から1年半ほど前。
すっかり落ち目のライターとなり、仕事もなく遊んでばかりだった海東くんを、私は訪ねた。
契約書を携えて。


『ライナーワーク株式会社と専属契約をしない?』


自宅ソファで転がっていた彼は、自棄に満ちた瞳で私を見つめた。
会うのは1年ぶりくらいだった。


『専属でアプリ向けのゲームシナリオを書いてほしい。その傍ら、うちのライトノベルの分野か、文芸誌の分野で作品を書こう。作家として』


単純な救済措置だ。
専属で働いてもらう代わりに、小さくてもつまらなくても安定した仕事の供給を請け負う。
さらに頑張り次第では作家の未来も用意できる。

あの時の海東くんに断る理由なんかなかった。
彼は二言三言嫌味を言ってから答えた。


『お受けしますよ。ゲームシナリオはともかく、作家としては文芸誌の方を紹介してください』
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