ひねくれ作家様の偏愛
私は否定のため首を振る。


「いや、逆。すんごいハイペースに色々書いてくれる。でも、私のことガン無視だから、出版、連載会議に回せそうなものが上がってこない」


「へえ、じゃ効き目あったか」


飯田が聞こえるか聞こえないかの小声で呟いた。


「なに?今の」


「あ、こっちのこと。……それにしたって、桜庭はホント海東センセに好かれてるな」


一瞬、飯田の言葉にぎくりと固まる。
すぐに平静に戻れたのは、そんなはずがないという確固たる裏づけがあるから。


「好かれてたら、もう少し言うこと聞いてくれるよ」


「いやいや、好きな女だから言うなりになりたくないワケよ。男のプライド、わかるか?」


「わかんない。っていうか、彼の私の扱い、『好きな女の子に意地悪』じゃないからね。『下僕との上下関係の確認』ってとこだよ。どっちが偉いか知らしめたいみたい」


飯田が片眉をひそめて問う。


「桜庭と海東センセ、どっちが偉いんだ?」

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