ひねくれ作家様の偏愛
「今週末!」


海東くんの声が背中に追いすがる。


「今週末、いや、金曜には新しい話ができます!来てください!」


「ごめん。ラノベの作家さんと打ち合わせがあるから、メールで送ってほしい」


くたびれたバレエシューズにつま先を突っ込みながら答える。
冷たく響いてもいい。
私が彼に媚びる理由はない。


「18時です!定時後なら来られるでしょう?来てください」


「海東くん……」


「命令です。来てください」


彼の声に背を向けたまま、私は答えた。


「私はもう、きみのご機嫌をとってまで書いてもらう気はないんだよ」


ああ、言っちゃった。

ほとんど嘘で、少しだけ本当の最後通牒。

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