ひねくれ作家様の偏愛
言葉にできないでいる私に海東くんは言った。
相変わらず背中を向けたまま。


『桜庭さんって処女でしょ?』


『え……!?』


『バージンでしょって言ってるんです。男としたことないんでしょ?』


なんで、きみにそんなことわかる。

と、思いながら、自分の野暮ったい姿を見下ろす。

就活用の黒の三つボタンスーツ。丈の中途半端なスカート。
ストッキングは伝線している。
髪はぼさぼさのボブで、ダサい黒ぶちメガネ。
薄すぎてほとんどノーメイクな顔。

確かに、男性経験豊富には見えない。

何より、海東くんの言うことは図星も図星。
23年間、彼氏はおろか、恋愛自体に縁がなかった。
自分からは近付かなかったし、異性に好意を持たれたこともない。

私の沈黙を肯定ととった海東くんが、説明を続ける。
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