深夜26時はキミと一緒に、
Another ver.

「早苗先生…。」

いやらしく耳元に、低く甘く囁くその声が……私の全神経を刺激する。

それに不思議と抗えない何かが、私の心の中にあるのを全部見透かしてるようで…、

早乙女先生のそういう所、ずるいと思う。


彼が私を見つめる眼差しは、すごく情熱的で惹かれるものがあった。



だからお願い。

そんな…そんな熱っぽい目でこっちを見ないで欲しい。
絶対に、その目からそらせなってしまうから………!



「離して...下さい。お願い..、」

声を絞り出して出すも、早乙女先生は聞く耳持たずだ。


誰もいない夜の職員室。
私たちのやり取りだけが、部屋中に響き渡っていた。

どうしよう。

このままいったら一体私はどうなるのだろうと思った。
こんないきなり、どうすればいいのかが分からない。

次の瞬間、早乙女先生の手が私の顎を捉え、一瞬で彼の顔と私のが近くなった時__
ふと私は冷静に考えた。


だめ…。
もし、ここで唇を重ねたら、きっと取り返しがつかなくなってしまう。

抗えずに私は、求められるがままに流されてしまう。


だから......、

だめ____!


__パァーン!!

気づいたら、私の手は早乙女先生の頬に飛んでいった。


「ぁ、……。」


いたい、

人を殴ると自分も痛いんだ。

彼を殴った後の掌の感覚…、それはズキズキといつまでも残っていた。


私が知らないうちに目頭はみるみる熱くなっていって、
吐き捨てるように言い放った。

「……か、からかわないで。」

早乙女先生みたいに、若くてかっこいい先生が私なんか本気で相手にする訳がない。


私は、からかわれているから。

頭ではそう理解している。
それなのに、再びどくどくと高鳴る心臓に腹が立つ。

早乙女先生に触れていたところが、ジリジリと熱を帯びて、うずいて……

私はきっと、どうかしてるんだ。


しばらくして、早乙女先生に背を向けて歩き出した時、後ろからの声に私は足を停めた。


「…からかったつもり、ないですが。」

振り返ると、真っ赤な顔で恥ずかしそうに口元を手で隠す早乙女先生の姿があった。


「_____ッ!」


やっぱり……
やっぱり、早乙女先生はずるい。
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