艶楼の籠
どこからともなく、聞こえてくる弦楽器のような音色と楽しそうな笑い声のせいか。


「なんだか、夜の街は自由なのね…。」


憧れに似たような、妬んでしまうような表現し難い感情が溢れてくる。


―ガサッ!!―


柳の木の下で、白い影が動いている。
人の様な影であるとわかった瞬間、恐怖でその影から目が離せない。
身体が動かない。


白い影は月明かりに照らされて不気味に動いている。布を纏っている人の様なものが、はらりと流れるような動きで、私に近付いてくる。


「っ!!」


私は、脚が硬直して動けない。
生白い手が布の間を割って出てくる。
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