ごめん、好きすぎて無理。







『……海、その時が来なかったんじゃない。
 お前が一人で諦めた、それだけだと思う』





俺は静かに、海にそう伝える。


海は俺の方に視線を向け、その言葉に驚いた顔を見せる。



でも、俺はそのまま言葉を続けた。







『もうダメだと、無理だと、そう諦めたんだよ、お前は。

 確かに諦めたくなるよ、待てども待てどもそんな機会はなくて、思ってるだけで、諦めて終わりを決めたいと思うよ。

 けどな……それでも諦めなかった奴だから、どうしても諦めたくないともがいたから、そのチャンスが来るんだ。

 お前にはそれが足りなかった、それだけだよ。

 でも、もしお前がもう一度それを追いかけるというのなら、諦めずに必死になる、そうしたら今度こそチャンスは来る、俺はそう思うよ』










『………兄貴……』






海は俺の顔をまじまじと見つめる。







『だから、俺も紗奈とのこと、紗奈のお父さんにも、お母さんにも、そしてお前にも言ったんだ。

 傷つける、それを分かっていても、それでもどうしても紗奈のお父さんにもお母さんにも、お前にも分かってほしい想いがあったから。

 あいつは俺なんかを好きだと言ってくれた、だから俺は頑張れる、そう思ったんだ』









『………俺、今日失ったばかりなんですけど!

 でも…紗奈が選んだ人が陸で良かったよ、一番悔しい相手だけど…。

 俺も陸と紗奈みたいな恋、そういう相手が欲しいよ…』





海は天井を見つめて、そう言った。




だから俺も天井を見つめる。







『お前だっているだろ?
 その約束の相手が』






海、お前は知らないと思うけどさ。


お前との約束を泣きながら、叶うのを待ってる人がいるんだよ。






その人の想いに気付け。















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