彼と私の事情
「…ごちそうさまでした。」


結局、払いますっていっても

そんな金があるのかと冷静に返された。

ぐっと詰まった私を見て、勝ち誇った顔で2人分の会計を済ませていた。


でも。ちょっと面白くないよね。

ちょっとむくれる私をよそに、立川さんは至って普通の顔で運転している。


途中にコンビニによったけど、絶賛むすくれ中の私を置いて、中に入っていった。


「…ひゃっ」

首にピタッと置かれた冷たいもの。

飲み物を買ってきてくれたようだ。

「…どうも…」

ありがたく受けとることにしておく。

「…怒るなよ。お前にそんな顔されるとどうしていいかわかんなくなる。」

この男が言っているのかと確認してしまった。

ハンドルに頭をつけてぼそぼそと喋るキャラでしたか?

妙に可愛く見えて…

「…なんだよ。」

つい、頭を撫でた。

「…怒ってないですよ。ちょっとすねたけど。ご飯美味しかったですね。」

さっきまでの不機嫌はどこへやら。
不思議と笑顔になる私。
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