彼と私の事情
すっかりこの家に私が馴染んでしまって、
確実に私物も増えている。

掃除機とか冷蔵庫の中身とかも
勝手にしていいと言われてるので、私好みに変えた。

出ていくことは考えていたけど、

この暖かさを捨てれない。

…あとでもしものことがあったら。
もっと辛くなるのは自分なのに。



「…ただいま。」

ん?いつもより声が低い気がする。

主を迎えにいくため玄関に向かうと、

「…っ…!」

靴を脱ごうとした彼が大きくよろめいた。

慌てて肩を貸すけど、彼の体温の高さに驚いた。

「…熱あるんじゃないですか?」

そういっても無言のままで。

顔を覗きこむと、ぐったりして喋るのもだるそうだ。


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