赤いエスプレッソをのせて
お見舞いに来てくれた仲代先生が、目を冷ましたばかりの私へ、こんなことを言ったもんだ。

「ほんっとうの意味で、アナタ達ってバカップルなのかもしれないわね。お熱いわ」

バカップル……ふぅん、いいじゃないそれ、って感じだ。

世界に私と彼だけがあればいいんだから、うん、褒め言葉として受け取っておいた。

で、私の復調を聞いた彼は、昨日どうしてかひどく急いだ様子で、

「僕はアナタを守れなかった。だから、アナタの絵を描きたい、お願いだ、描かせてくれ」

と、言ったのだ。

私は別に構わなかったけど、看護士さんがキッツ~イ声で、ダメです! と怒鳴った。

目が覚めたばかりなんだから一日ぐらい安静にしていろ、ということだそうだ。

まったくお仕事熱心なことで。

結局ショーは、最低限の絵描き道具を私の病室へ運んでおいて、今日、私を描いているんだ。
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