赤いエスプレッソをのせて




仲代先生は催眠療法を心得ている。

そんなバカな、なんて思うこともあったけど、実際に我が身で受けてみて、その不思議な感覚に驚いた。

自己流で表現するなら、夢を見ている感覚に、限りなく近いかもしれない。

夢を見ている時は、それが夢だなんて気付く人はいない。

同じように、催眠をかけられている時は、彼女の言葉がまったくの虚偽に聞こえないんだ。

彼女の唇から呟かれる言葉こそが、真実で、現実で、全部なのだ。

私の肩に見える妹は、さっきも言った通り、心霊やお化けの類いじゃないらしい。

実際、霊能力者だという人のところへお払いに行ったら、きょとんとした目で、どこに霊がいる? なんて訊ねられてしまった。

じゃあいったいなんなのよ、というわけで精神科へ行ったら、仲代先生がその答えをくれた。

『私の罪の意識』、そのものだそうだ。

罪の意識ぃ? なんて、その時はすっとんきょうな声をあげてしまった。
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