赤いエスプレッソをのせて





ベッドの下やら、

「あれっ? ――ねぇ?」

冷蔵庫の中やら、

「ちょっとさ?」

玄関先やらをあちこち探し回りながら、

「千代ー、あれ知らない?」

返事をしない千代に、いつものくせで訊いていた。

「ほら、昨日買ってきた、オレンジジュースよ。知らない?」



私は別に、霊能力者とか、超能力者じゃないんだ。

単に、自分の肩に、今はこの世にいない妹が見えるというだけ。

妹が死んだのは私が八歳の時で、その理由は、そんなことで? と他人に驚かれそうなものだから、とてもじゃないけど語りたくもない。

簡単に言ってしまえば、妹にだれかさんがムシャクシャした、そんなところだ。

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