赤いエスプレッソをのせて
妹が死んだ時、私はまだ八歳で――法には裁かれなかったけど、こうして妹に裁かれている。

肩の上の妹・千代は、本当にただ、そこにいるだけなのだ。

私がどれだけ笑っても、泣いても、怒っても、彼女はそこから離れない。

走っても、泳いでも、眠っても、ずっとね。


「――あっ、あったあった! ――もう、なんでお風呂なんかに転がってんのよ」

浴槽の中に見つけたペットボトルのオレンジジュースを取り出しながらぼやいた私は、

昨日これを使ってお風呂の水増しをしたことを思いだし、せっかくすいた自分の頭をガシガシと掻いてしまった。

(なにやってんのよ、私)

なにやら飲み心地が悪そうにぬるくなってしまっているオレンジジュース片手に、ひとり自虐して時計を見ると、早くも十一時を過ぎてしまっていた。
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