赤いエスプレッソをのせて
「アンタのほうが私の話ちゃんと聞いてくれる分だけ、まだマシかもしんないわねー、千代」

夜半も近くなってアパートへ帰りながら、肩へ言った。

暗闇に、千代の体はよく映える。

私の想像や妄想でしか見えていないからか、妹の体はほんのりと白い靄に包まれているんだ。

黒と白、相反する色同士が目立つのは、ま、当然でしょう。

ちなみに、夜半近くにバイトが終わるように時間を調整しているのは、アパートまでの帰り、千代と気兼ねなく話すためだ。

私の言葉に、千代は、肩の上でこくりと大きくうなずいた。

左肩にいたはずが、いつのまにか右肩へと戻っている。

どうしてだか知らないけど、彼女の存在を肯定する時だけ、千代はなにかしらのリアクションを見せるのよね。

「ははっ、アンタも現金よねー、ほんと」

と私は笑った。

片手に持った、賞味期限がヤバめの弁当やパンがたんまりと入ったビニール袋を、ついでに振り回す。
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