9歳差は、アリですか?
どうしよう、嫌われていてもまだ別れを切り出された訳ではないし、知らないフリして付き合い続けようか。そんな現実逃避的な考えが思わず浮かぶ。が、
ーーーそんなの無理だ。
初めてである。嫉妬で身が焦げそうだった。

嫌、悠くんは『あたしの』

しかし、実際何かできる筈も無くて人が流れ行く歩道で何かのポールのように立原は立ち竦んだ。今までの彼氏の『浮気現場』など数知れず見てきたのに、その時は何の動揺も独占欲も生じなかったのに、それだけ浅岡は本気で好きだったのに。今まで断られたことが無かった為調子に乗ってしまっていた。今日断られたのは自分ではなくあの子と会う為。

ずっと自分だけだとどこか過信していた立原は情けなくて自嘲気味に内心笑う。
こんなに辛いんだ、と立原は袋を下げていない方の手で顔を覆った。涙が出そうなのを唇を噛み締めて堪える。
視界が少し歪んでくると、たまらず立原は方向転換しもうだいぶ小さくなった浅岡たちに背を向けた。

少なくともほんの一時は浅岡も立原の事本気だっただろうと自分に言い聞かせるだけ無駄であり、人が多くいるのに唇を噛んでも堪えきれなかった涙をはばからず流した。
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