小さな恋物語


「痛かった?ごめんね」

「…びっくりしちゃって」


坂本さんに言われたことも、藤川くんが言ったことも。

藤川くんの背中が広くて、明らかにマスコット的な位置じゃないって思って。


「さっき言ったのは本当のことだよ。僕はほのちゃんが好きなんだ。一目惚れ。だから僕のことを認識してほしくて、仲良くなりたくて毎日昼休みに行ってる。ほのちゃんが僕に興味がないのは分かってるけど、僕に付き合って一緒にお菓子を食べてくれるから素直にそれが嬉しい」


にっこり笑った顔はいつもと変わらない、くしゃっとした顔で。


「私、藤川くんのことを男として意識したことなかった。でもさっき…」

「さっき?」


あの瞬間――私を背中に隠したあの瞬間、感情を上手く説明出来ないけどとにかくドキドキして。


「…何でもない」

「何それ。すごい気になるんだけど」


藤川くんが笑うから私もつられて笑ってしまって。
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