小さな恋物語



「もしもし?」

「おー、生きてたか。お前、今日大変だったらしいね」

「仕事山積みでね。その他諸々あったし。もう死にそうなんだけど」


夕飯食べる時間もなかった。お腹は空いてるけど疲れ過ぎて食べたくない。


「明日休みだろ。今そっち向かってるからさ、ちょっと出かけられる準備しといて。財布とケータイくらいでいいから」

「もう寝るところなんだけど」

「あと20分後。じゃ」


私の有無も聞かずに電話は切れた。こんな真夜中に何て電話を寄越すんだ、こいつは。


雄也とは同期で、最初の一年は研修で一緒に行動していた。
雄也は見た目こそ今時なチャラチャラしている感じだけど、仕事は早いし人付き合いも良いから先輩や上司にも可愛がられている。強引なところも多々あるけど、温厚で優しいから女子からも人気があって。

私も後輩から紹介してほしいと言われたことが何度かある。
実際に女性社員と話しているところや、社食でランチしている場面をよく見るけれど。それでも浮いた話を一度も聞いたことがなかった。

< 53 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop