溺愛オフィス


強く掴まれた肩。

私を見下ろす彼の、興奮したような目。

彼に押し倒されたあの時、威圧的な父の姿を思い出した瞬間から、臆病になってしまったんだ。

逃げ出した私に翌日、彼は謝ってくれたけど、以来、手を繋ぐのもどこか躊躇うようになって。

私たちは少しずつダメになり……


別れた。


恋をしたくないわけじゃない。

だけど、恋をした先にある、恋人として当たり前のはずの触れ合いが少し怖い。

それに……

好きな人を拒絶することが、自分だけでなく、相手の心をも傷つけてしまうのを、私は知ってしまった。

だから余計、尻込みしてしまう。


……でも、変わりたいし、乗り越えたい。


まるでヤマアラシのジレンマだ。


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