溺愛オフィス


スタジオに入ってからのKAORIさんは、特に普通で機嫌が悪いようには見えなかった。

メイクさんとは楽しそうに会話していたし、桜庭さんから服についてのイメージについて意見を聞いている時も、笑みを浮かべていた。


「いいね、流石KAORI! あと2ポーズちょうだい!」


KAORIさんのお気に入りだというカメラマンさんのリクエストに、バックの前に立つKAORIさんが次々とポーズや表情を変えていく。

撮影は順調。


きっと、KAORIさんの気分はもう晴れたんだろう。

何があったのかは知らないけど、彼女の機嫌が直って良かった。


その後、モニターチェックがてら休憩に入って。

私は皆に飲み物を配ってから、用意していた差し入れのお菓子を紙袋から取り出した。


これは、KAORIさんのお気に入りだという有名洋菓子店のベルギーワッフル。

季節によって期間限定のものもあり、それも含めてたくさんの種類を購入してきた。

KAORIさんに少しでも喜んでもらえたらと、そう思って……


「これ、良かったらコーヒーと一緒にどうぞ」


椅子に座って休む彼女の前で箱を開けた。


けれど。


< 167 / 323 >

この作品をシェア

pagetop