溺愛オフィス
数分後。
鏡の前に座らされた私は、プロの手によって魔法にかかるように変身させられていく。
アイシャドウで上下瞼に立体感を出し、アイラインはインサイドにも入れて目元をくっきりと見せ、さらにつけまつげをオン。
眉は目と近く見えるよう、下の部分をしっかりめに書いて上部をぼかして。
ノーズシャドーで鼻を高く見せ、オレンジ系のリップとチークを入れる。
Tゾーンと顎先にハイライトを乗せたあと、人生初のカラーコンタクトを入れて、黒目を少し大きく見せれば……
「す、すご……」
それしか言葉が出てこないほど、鏡の向こうにいる私の顔が変わっていた。
メイクだけで自分がここまで変わるなんて信じられない。
それから、ヘアスタイルを作って用意された衣装に着替えれば、もう完璧に私じゃない私がそこにいた。
「柊奈、すっごくいいじゃない!」
美咲が拍手しながらはしゃぐ。
その横で壮介君は「な? 言った通りだろ?」なんて、ちょっと自慢げ。
私は、桜庭さんの反応が気になり、二人より少し後ろにいる彼に視線を向ける。
すると、腕組しながらこちらを見守っていた桜庭さんと目が合って……
桜庭さんは、涼しげな瞳に笑みを浮かべることで
褒めてくれた。