溺愛オフィス


エントランスを通り、エレベーターで階を上がって。

ナースステーションで受付を済ますと、看護師さんに教えてもらった父の入院している部屋へと足を向ける。


一歩進む度に、緊張が増していくけれど。

桜庭さんからもらった言葉や優しさを思い出せば、それが支えになって、私の勇気に変わる。


ぶつかって砕けても大丈夫。

それもきっと、前に進む為の一歩なんだ。


そう思いながら、私は父がいるであろう病室へと足を踏み入れた。


静かな院内。

今回の入院では、父は個室に入っている。

教えてもらった病室のネームプレートに父の名前が入ってるのを確認した私は、小さくノックをしてからゆっくりとドアを開けた。

父の反応はなく、私は入室するとベッドへと近づく。

備え付けのテレビはとても小さな音でついてはいたけれど……


父は、お腹のあたりまで布団を被り、仰向けの状態で寝ていた。

私は鞄をそっと椅子の上に降ろすと、眠る父の様子を伺う。


……なんだか、前の入院時よりやつれた気がする。


大丈夫なのかと点滴の刺さる手に視線を移せば。


父の手が、数枚のカードか何かを持っていることに気付いた。


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