溺愛オフィス
とりあえず壮介君のオススメしてくれたエスニックチキンプレートを頼んで。
深水さんと壮介君が交わす会話にどうにかついていきながら、落ち着かない気分で食事をした。
時々、会話の流れもあって桜庭さんと視線がぶつかったりもしたけれど、私は慌てて視線を外してしまっていた。
──でも、そんなのは私だけ。
桜庭さんの態度は至って普通。
平然としているものだから、少しだけ……がっかりしてしまう。
意識しているのは私だけなんだと。
やっぱり、試しただけ……だったんだろう。
そもそも、桜庭さんみたいな人が、私のことを意識するわけがないんだ。
高望みはやめよう。
そうすれば、落ち込むことも……
なんて、後ろ向きな考え方だよね。
もしかしたら、私が恋愛に臆病なのは父のせいじゃなく、私が弱かっただけなのかもしれない。
父を理由に"恋"から逃げてたのかも。