LONELY GUARDIAN―守り人は孤独と愛を歌う―


「謝るのは、オレのほうだ」

「え?」

「平井の屋敷で、怖い思いをさせた。

……悪かった……」


平井の声が、脳裏によみがえる。


“最も襲いたくない相手”

“最も守るべきだと信じる相手”


オレは、迷うことなく、鈴蘭を選んだ。

弱くて、うまそうで、美しくて。

支配したいと思ってしまった。


同時に。

引き千切られそうなくらい、同時に。


本能的に知っていた。

男が命を懸けて守りたい存在。

それは、一生に1人きりの、愛する女。


オレにとって、鈴蘭は……?


オレはメットをかぶり直した。

考えるのを、やめた。


「また明日、迎えに来る」


アクセルを回す。

鈴蘭の声が聞こえた気がした。

でも、訊き返さなかった。


オレはバイクを駆って、一陣の風になる。

何も考えずに、ただ、走る。


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