ハートブレイカー
翌日の土曜日。
私はスマホを買い替え、ひたすら荷造りに専念した。

引越し業者へ頼むのは気が引けた。
でも箪笥やベッドなどの家具を運搬するのは、私の軽じゃ無理だ。

今より狭いところへ身を潜めるのだから、たくさん持っていっても入りきれない。
かといってあれもいらない、これもいらないじゃあ、後々困る。
だから持っていくものは厳選した。

この先漠然としているにも関わらず、不思議と将来に対する不安がなかったのは、赤ちゃんがいるからかもしれない。
赤ちゃんがいなければ、自分はここまで小細工をする必要はなかっ たのかもしれないのに。
この矛盾は何だろう。

「でも・・・キミを責める気なんて全然起きないよ。むしろ私を守 ってくれてありがとう」

気づけばそんなことを口にしながら、私はまだ平らなおなかをなでていた。
この子のためにがんばろう。
私ががんばらなきゃ、この子は死んでしまう。
それが私に生きる気力を与えてくれた。
やる気を引き出してくれた。


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