ハートブレイカー
体調を整えること、そして直哉を安心させることを優先させると決めた私は、思いきって残りの2週間強、全て仕事を休み、そのままリューチ社との契約は終了した。
その間私はゆっくり生活をしながら、極力直哉と一緒に過ごした。
直哉は私が急にいなくなることに、不安を抱いているようだ。
死別より、私が蒸発することを危惧しているのか、急に抱きついてくることも度々あった。

「ママだいすき。どこにもいかないで。ぼくとパパといっしょにいてね」
「・・・ママはどこにも行かないよ。直哉のそばにいるから」

小さな体をしっかり抱きしめて、柔らかな黒髪を優しくなでる。
直哉に安心感を与えるように。

同時に、私は直哉を抱きしめることで癒されていると、この子は気づいているのかな。
だから逆に、私を安心させるよう、抱きついてくれるのかな、とまで思ってしまった。

その間にそんな会話も徐々に減り、直哉は夜うなされることも少なくなった。
お漏らしは、最初の2日以降していない。
不安がる顔より笑顔が増えた。 以前みたいに。

だから私は安心して、仕事へ行くことにした。

< 142 / 223 >

この作品をシェア

pagetop