ハートブレイカー
「営業部のやつらは信頼している。やつらも俺を信頼してくれてると思う」

うん、そうだね。私もそう思う。
と言いたいのに、言葉が出なくてうなずいた。

涙がポトッと布団に落ちた。
う。彼に両手をつながれてるから、涙拭けない・・・。

それが分かっているのか、彼が両手を離してくれた。
でも、すかさず私を囲うように右手を回し、両腕の自由を奪うと、左手で私のあごを軽くつかんで後ろに向かせた。

「俺のために泣いてるのか」
「ちっ、ちが・・・う」

私の頬に流れている涙を、彼が舌でぬぐった。
せっかくマッサージしてもらってほぐれた体が、驚きでガッチリ固まる。

「それから・・・仕事でもプライベートでも、信頼できるというより、信頼したいと思っている女はおまえだけだ」

何、この人!
私の頬舐めながら、そんなセリフ吐くなんて!

一瞬でもこの人の味方だと思ったことを後悔したほうがいいのか。
なんて現実逃避をし始めた途端、彼が私を横向きに押し倒した。

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