ハートブレイカー
お昼も終わって営業の人たちがドヤドヤと戻ってきた。

「おかえりなさい。課長、お茶飲みますか?」
「あー、うん。お願い」
「はい。中西さんはコーヒー飲みますか?」
「ノーサンキュー。俺と伊藤は、今からアウトワーク」
「は、い。行ってらっしゃい」

中西さんの横文字に少々ウケつつ、チラッと伊藤くんを見ると、彼はプッとふき出していた。

伊藤くんは24歳。
2課の中で一番若いけど、新卒でここに入社しているので、私より先輩だ。

「あ。伊藤くん、ちょっと待って」
「はい?」
「ネクタイ。歪んでるよ」

まだ社会人としての身だしなみや気配りが発展途上なのは、若さゆえなのか。
ネクタイを結び直す彼の前で鏡を持つ私は、まるで母親みたいだ。

心の中でハァとため息をついたとき、周囲の空気がピリッと引き締まったのを感じた。
ということは・・・。

思ったとおり、彼が来た。


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