ハートブレイカー
「伊藤」
「は、いっ」
「営業は会社の顔だ。身だしなみには気を配れ」

そう言った彼は、今日もスーツ姿がビシッと決まっている。
乱れた服装とか、ネクタイが歪んでるところなんて見たこと・・・。


『愛美(まなみ)、ネクタイ外せ。俺のシャツも脱がせろ』

かっ・・・私のバカッ! 何思い出して・・・!

「はっ、すみませんっ!」

伊藤くんの声と瞬きで、どうにか現在に意識を戻した。
それなのに、まだ無防備な心のままで、彼と目が合ってしまった。

「顔が赤いな。大丈夫か」
「だっ、大丈夫。大丈夫、です」

そのとき彼は、私の目、ではなく・・・首筋あたりを見ていた。
咄嗟にそこへ手をやると、彼の薄い唇が、満足気にフッと上向く。

あ。しまった!
松田さんの詮索の目が・・・痛い。

これは・・・これは、新種のいたぶりですか!

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