ハートブレイカー
「必要な情報と証拠は手に入れた。それがなくても駒が勝手に動くだろう」
「休み明けに役員会議だ。次期社長は朔哉、今度こそおまえにさせるぞ」

「今度こそ」って・・・?

「だから逃げるなよ」
「海堂商事を辞めるなと言えないのか?ったく、父さんは素直じゃない・・・」
「おまえもだろ!とにかく・・・辞めるな」

彼がフッと笑った。

「俺はあそこに未練はないが、社員に対して責任を持つ立場だという自覚はある。だから辞めないよ」

何だか分からないうちに、仕事の話になっていた。
だけど、いつの間にか険悪な雰囲気は消えていた。

直哉は、彼と会長さんが大事な話をしているというのは分かったのか、静かに、そして彼そっくりな顔に真剣な表情を浮かべながら、彼らの話を聞いていた。

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