ハートブレイカー
竦んだお母様が、ヒッと声を上げた。
でも彼は追撃の口を止めない。

「俺は直哉に他人のことを悪く言うな、そして嘘はつくなと教えている。それなのに、手本を見せるべきである母さんが“小言”を言 ったり、愛美に対して失礼な態度を取り続けるのなら、今後二度とここへは来ないし、連絡も絶つ」
「朔哉っ!」
「祖父母であろうと関係ない。どちらか選べと言うなら、俺は迷わず愛美と直哉を取る。会社はいつ辞めても構わない。まあ、どのみち正則は近いうちに会社を追われるだろうから、俺まで抜けると海堂商事は潰れるだろうな」
「朔哉。それはどういう意味だ」
「正則は仕事ができる。だが社員の努力で生み出した利益を、正当に社員に還元せず、社長だからという理由で必要以上に貰い受けてることは、関係者としてどうかと思う」
「あいつめ・・・」

それだけで予測はついたのだろう。
温厚な会長さんの表情が一変した。
やっぱり彼は会長さんに似てる・・・。

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