ハートブレイカー
また区営住宅の応募をしておこう。
いつ入れるか、当選するかは分からないけど、応募しなかったら当選すらしない・・・。

「足りない・・・」

残高576円の通帳が滲んで見える。
でも、滲んでも、576という数字に変わりはない。

私は食卓に顔を突っ伏して、声を押し殺して泣いた。
直哉を起こさないように。

今日はいろいろありすぎたから・・・今だけはひとり、ひっそりと弱気になることを自分に許可しよう。
氷室さんのことも、仕事のことも、セクハラ親父のことも。
とりあえず今だけは忘れたい。


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