いつもそれは突然で
それから私は目を開けた。
2度と開けることのないと思ってたこの目を私は確かに開いていた。

この胸で確かに呼吸をしていた。

「んん」

って目を覚ました私の視界に入ってきたのは先輩の寝顔だった。

「先輩?」

意識を取り戻した私は起き上がろうとしたけど体が重くて起き上がれなかった。

「先輩起きてくださいよお、先輩」

ふと先輩の頬を触ってびっくりした、
先輩の体が冷たい、そして景色がすごいぐらついてる。

「せんぱい」

そう言ったつもりだったのに聴いてる言葉は呂律が回ってない。

「お、目を覚ましたか?」

先輩は驚いたように飛び起きて私のおでこと先輩は自分のおでこを触って
うん?って首をかしげたりした。

「先輩?」

「俺のほっぺた触ってみろ」

そう言うから私は先輩の頬に優しく手を当てた。
私は怖くなるくらい先輩の頬を冷たく感じた。

「どうだ」

「柔らかい」

「そうじゃなくて」

「すべすべ」

「お前は馬鹿か!」

先輩に初めて怒鳴られた。
私は涙目になった。

でもそれよりもこんなに好きな先輩の声が頭に響いて痛い。

「なんですかあ」

「暖かさはどうだって聞いてるんだよ」

「めちゃめちゃ冷たいです」

「お前、急に倒れたんだぞ!で、熱計ったら38度も熱あるし!
無茶しすぎなんだよお前は!」

私初めて先輩に怒られた。
だって1日でも先輩に合わなくちゃ嫌なんだもん、さみしいんだよ。

きっと先輩には分かんないよ。

「わかんないよ先輩には!
人を本当に誰かを好きになったことのない先輩には一生この気持ちがわかんないよ!」

好きな人になんてこと言っちゃったんだろう。
最低だよ、私。

何ムキになんかなっちゃてるの、私。
私は気まずくなって布団を頭からかぶって先輩のいない窓側を向いた。

私わかった。
体は暑いのに、何かを失う気がして怖くて今からだ震えてるよ。

その瞬間私の体は一気に重くなった。

へっ?って思うと先輩が後ろから私のことをギュってしてくれてた。
ダメだよ、先輩。

2人きりの救護室でもそれはダメだよ。
私…もっと先輩のこと好きななっていちゃうじゃん。

いまでも苦しいくらいに大好きなのに。
この思いは届かないのに。

なのにそんなことしちゃダメだよ。


「わかるよ」

それは先輩のいつもと違う落ち着いた低くてどこか悲しみの込められたような声。

「せんぱい?」

「俺だっていま好きな人がいるんだよ。
可愛くて鈍臭くて俺がいないとどうしようもないような子が。
でも好きだって言えないいんだよ。好きでも。だからわかるよ」

その先輩の好きな子は私に似たような子。
私じゃないって思った瞬間。

泣いちゃうなんて私卑怯じゃん。
それにいま先輩のことが好きなことバレちゃったじゃん。

中学1年から高校2年の今日までうまくやってきたのに
4年間頑張れたことがなんでこの一瞬が頑張れないの。

いま胸の中で失恋の音がした。

わたし宇都宮葵はいま確かに失恋した。
でもごめんね、やっぱり先輩のことがね私は好きだよ。

それからしばらくの記憶はない。
きっと私、疲れて寝ちゃったんだ。

「葵ちゃん、葵ちゃん?」

心地い声で私は目を覚ました。
あっ…夢が実現した。

ほら、やっぱり好きな人の声で起きると目覚めも機嫌もいい。

「俺が連れて帰るから」

「なんでですか!?」

「お前、すごい熱出してんだぞ当たり前だろ」

私はその言葉に何も言い返さなかった。
確かにそうだよね。

私は先輩に肩を借りて職員室まで行って早退届を出してきた。
先輩はこんな私のために4時間もに勉強時間を投げた。

今日の残り4時間は先輩の好きな科目だって知ってるのに。
知ってるからこそなんか罪悪感で胸が締め付けられた。

「すいません」

そいって階段を目の前にしたとき
私はその場に座り込んでしまった。

手すりを掴まないと私は立てない状態だった。
口にはマスク。

うまく呼吸ができない。

「おい、大丈夫か」

先輩が走って私に駆けつける。

「立てない」

私はあまりのしんどさに自然と目から涙が流れた。

「これもて」

先輩に渡された2つのカバン。
立つことすらできないのにこの先輩は何言うんだって思った。

私は壁に背中をのせて先輩の言うとおりにカバンを持った。
先輩は片膝を床について私に背中を向けて

「ほら」

そう言った。
こんなところじゃ危ないよ。
それに、変な噂だってたっちゃうよ。

私としたらお似合いの2人がって騒がれたって先輩だから何の問題もないよ。

でも先輩の好きな人はきっと私の友達のみかちんだから。
それとしたらまずいから。

「あぶないですよ」

「だいじょうぶだから」

「それに」

「病人はおとなしくしてろよ」

先輩にいつもより一段と低い声。
少し私を睨みつけた先輩の目。

私バカだ。
こんなにも好きな人を怒らせちゃった。

私は先輩の言うとおりにした、
先輩は少しふらつきながらも私を自転車を止めてるところまで運んでくれた。

絶対に重いよね。
このカバンと、私の体重じゃ。

先輩知ってますか?
女の子のカバンって男の子が思う以上に重いんです。

「貸して」

先輩にそう言われて私た2つのカバン。
先輩は自転車にまたがって私は特等席に乗った。

「ちゃんと捕まってろよ」

先輩の後ろから少し強めに私は腕を回した。

きっとこんな時だからこそ
たまにこんなことができるからこそこういうのって特別に感じれるんだね。

私はこんなに幸せなことが毎日続けばいいって心の中で思ってる。

走り出した自転車。
向かい風が苦しくて私は先輩の背中に顔をうずめた。

「大丈夫か」

その言葉に私は2回首を横に振った。
少し速度の落ちた自転車。

私は空を眺めてみた。
過ぎ去っていく毎日の景色。

どこまでも続く大きな空。
空って果たしなくどこまでも続いていくんだね。

きっとこんな私の身長じゃあの、この空には届かにない。

きっと私の気持ちと先輩の重いくらい遠い距離だね。

先輩の背中は私の思う以上に大きくて力強い。
先輩の背中からはあの香水の匂いがした。

「先輩今日もつけてるんですね」

「しんどい時にこの匂いきついよな、ごめん」

なんで。
謝らないで。

寂しくなるよ。

私の好きな先輩の匂い。

でもね1つ嫌なところはこの匂いを覚えてられないところ。

こんなにも好きな匂いなのにおぼえてられないの。
すごい身近な匂いすぎて。

本当に香水らしくない匂いだから

その匂いを匂えばわかるのにすぐ忘れちゃう。
どんな匂いかわからなくなる。

そういうところが嫌だよ。

家に着くと先輩は私に肩を貸してくれた。
先輩の方に体重をかけて私は玄関まで歩く。

インターホンを押すとママが出てきた。
ママは目を点にして驚いた様子

「すいません、葵さんが学校ですごい熱を出して倒れられたので
早退という話だったのでここまで送ってきてしまいました。」

葵さんか。
なんか少しに他人行儀を切なく思えるのはなんで?

先輩は私の家に上がって部屋まで連れてきてくれた。
部屋の場所はママが先輩に教えた。

なんか好きな人に部屋に上がられるのって思ってる以上に緊張するね。

「ちゃんと寝とくんだぞ」

先輩はママと私を部屋に残して帰ろうとした。
私はベッドから立ち上がって先輩の服に裾を掴んで

「帰らないで」

そう言った。
先輩はその場に立ち止まった。

ママは空気を読んで部屋から出て行った。
なんか変な空気にしちゃった。

だって帰らないで欲しいんだもん。
そばにいてほしんだよ先輩に、ダメかな。

「わかったから」

ん?

「そばにいてやるから寝ろよ」

「うん」

私は先輩の掴んでた服も裾を離してベッドに戻った。

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