あの頃のキミは

「確かにあの時の絵麻は
見てられないくらいにふさぎこんでた。
高熱にうなされて記憶が飛んだ。
意識が戻った頃絵麻がケロッとしていて
正直ホッとしちまった。

でも、ほんとにこれでいいのか…って
ずっと心にひっかかってた」

ずっと目線を下にしていた裕太兄が顔をあげた。

「絵麻だってもう高校生だ。
あの頃とは違う。
傷つくかもしれない。
でもきっと心の整理をつけて、前を向いてくれる…俺はそう信じてる」


「…ありがとう、裕太兄」

「こちらこそ。ずっと絵麻の事、想っていてくれてありがとう」

にっこりと裕太兄が微笑む。

あぁ、やっぱり絵麻の兄貴だな。
笑った顔がそっくりだ。
俺の大好きなあの笑顔に。


ずっとずっと
あの笑顔を守りたいんだ、俺は。


それだけなんだよ。


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