あの頃のキミは
「…つぐみ…」

「大丈夫?」

息を切らし、顔を覗き込まれる。

「じゃないね…」

さらに聞こえる足音に顔をあげると、そこには凪くんと冬夜くんの姿。

私の顔を見て凪くんが不安そうな顔でギクリとする。

「絵麻…もしかして…」

私は無言で立ち上がり凪くんの前に立った。

バシンッ

静かな住宅街に乾いた音が響いた。

私は凪くんに頬に平手打ちをしていた。

「え、、絵麻⁈何して…」

つぐみの戸惑う声が聞こえる。

「信じられない‼︎…〜っ、なんでっ、なんで満里奈ちゃんにこんな大事な事話したの⁈っなんでっ……私に直接言ってくれなかったの⁈」

悲しかった。

なんでこんなにも大事なことを私にちゃんと話をしてくれなかったのか…

凪くんの事を忘れてしまっていた自分も許せなかった…

どうせなら怒って欲しかった。

「絵麻、それは…」

凪くんが何かを言いかけたけど、ごちゃごちゃな感情のまま私はまた走り出した。

このまま居たらちゃんと凪くんの話を聞けないだろうし、また怒鳴ってしまいそうだったから…

「ちょっと!絵麻!…私行ってくるから…とりあえず、皆見はそれ冷やして!」
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