あの頃のキミは
「ねぇ、思い出してくれたワケ?」
怒っているかと思ったけど、声は意外にも優しいものだった。
「う…うん。菫幼稚園で一緒だった…なぎ、ちゃん…だよね?」
少しホッとしてポツポツと小声で話す。
性別を勘違いしてたことは黙っていよう。
「やっと思い出してくれた。てか、なぎちゃんはやめてよ。」
そう言って少し八重歯を覗かせて微笑む。
あ、そっか。もう高校生だもんね。
「ごめん…えっと…皆見君」
「いや、なんで皆見?普通に凪早でいいんだけど」
さ…さすがにそれは…
凪早くん?ん〜…
「じゃあ…凪くんで…」
彼は少し目をまぁるくしたけど
「……まぁ、それで許してあげる」
と、プイッともっちーの方を向いてしまった。
な…何様なのよ…
「今日、一緒に帰ろ」
「え?」
想像もしていなかった言葉にすっとんきょんな声が出る。
「なに?駄目なの?」
ジロリと横目で見られる。
駄目ではないけど…いきなり、そんな。
まだちゃんと男の子の凪くんを受け入れられてないのに…
ていうか凪くん、どこに住んでるのか知らないし。