あの頃のキミは
いつの間にか爽やかに横を並走しはじめていた冬夜くんが言った。
「…走ってる意味ないじゃん。歩こー絵麻。」
確かに…つぐみは冬夜くんを引き離そうとしていたわけで、これじゃあ仲良くランニングだ。
桜並木を通って
またあの子の事を思い出す。
最近は温暖化の影響もあってか
桜の満開になる時期が入学式よりも少し早い。
風に吹かれてピンク色の花弁がクルクルと宙を舞っていた。
「そういえばさぁ、昨日…」
と、昨日の出来事を2人に話す。
「なんだそれ…新手のナンパか?」
やっぱり…うちのお母さんと冬夜くんの反応は、なにかと一緒なんだよね。
「えー、大丈夫なの?絵麻は本当に覚えてないの?そいつの事…」
「うん…小学校から一緒だったら大体中学も一緒じゃん?だとしたら、幼稚園なんだけど…」
「あーうちら幼稚園は、別だもんね…」
一緒だったら良かったのに…
とつぐみがしゅんとする。
「まぁ、次会ったらまた名前聞いてみる…」