金魚の恋
tomko!

長いようで短い、四年半でした。
今日が何の日か、覚えていますか? 
僕たちが初めて、文通を始めた日です。
覚えているよね、きっと。
それとも、幸せな日々の中で、忘れ去られている…?
寂しいけれど、それが良いことかも。

君は言ったね。
「やっぱり、運命的な出会いだったのね。
まさかあなたが、修学旅行で、私の街にやってくるなんて。
といっても、お隣の町なんだけどね。
逢いに行くわ、私。
昼間は無理でしょうから、夜の自由時間にでも、逢いたいの。
きっとよ、きっとよ!」

で、僕は言った。
「いいとも! 大歓迎だ。
単独行動は禁じられているけど。
なぁに、お腹が痛いとかなんとか、理由をつけてホテルに居残りする。
とりあえず、ロビーで逢おう。
その後のことは、成り行き任せさ」

それ以来僕の胸は、……痛いです。
君のことを想うだけで、キュン!
“あゝ、これが、恋なんだ…ね”


東京に着いたよ。でも、君の元には、まだだ…
明日、明日なんだね。明日の夜には、君に逢えるんだね。
君は今、何を考えているんだろうか…僕? 僕は…

怖いんだ、怖いんだよ、僕は。
写真の中の君は、満面に笑みを浮かべている。
クラスメートなのかい。
君の隣に立って、君の肩に手を回している男は、誰なの? 
聞きたかった、でも、怖くて、聞けなかった。
そりゃあ、女の子も居たサ。
その子も肩を組んでいたサ。
その隣の子もまた、肩を組んでいたサ。

「文化祭終了時の、打ち上げパーティよ」
説明書きがあった。でも、その男は…。悔しいけど、二枚目だあ!
僕が送った写真を見た、君のひと言。
「淋しそう…」

僕は君に、嘘を吐いてます。ホントの僕は、違うんです。小心者です。
生徒会長を勤めていられる、youさん。
スッゴク、カッコイイ! 
まさか君と逢えるなんて、考えてもいなかった僕は、youさんになりきったつもりで、手紙をせっせと送りつづけていたんだ。
いつかは、僕もyouさんのように、カッコイイ男になれる、と信じて。
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