卯月の恋
「そこがホストの怖いところなんだって。そうやって信用させて、仲良くなったころにお店に呼ばれるんだから。で、お金を巻き上げられるの。前、職場にそういう人いたのよ。その人、今は夜のお仕事してるんだから」

秦野さんの表情があまりにも真剣で、私は少しだけ怖くなった。


「でも私お金持ってませんよ?」


タクシー代も借りたくらいだから、それくらいは分かってると思うんだけど。


「でも、宮内がここで働いてること、知ってるんでしょう?P社って大手だし、ね。そういう真面目なOLが狙われるのよ」


「そうなんですか…」

「もしお店に呼ばれたら怪しいわね。ま、いざとなったら、とっとと引っ越しでもなんでもすりゃいいわよ」


それで励ましたつもりなのか、うつむいた私の肩を秦野さんはぽん、と叩いて立ち上がる。


「さ、昼休み終わるよ」


カツカツと姿勢よく店を出ていく秦野さんの後ろを、慌てて着いていきながら、こっそりため息をついた。


ホストって、引っ越ししなきゃならないほど、恐ろしい生き物だったのか…。



< 16 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop