卯月の恋
「あのホストと毎週ご飯食べてる!?」


「は、はい…」

秦野さんは鯖の塩焼き定食を食べる手をとめて目を丸くする。


「一回きりだと思ってた…」

「すみません」


なんで私あやまってるんだろう。


親子丼をゆっくり食べながら、今度は玲音にどんぶりものを作ってみよう、なんて考える。

男の人だから、カツ丼とかいいかも。
おひたしと、ひややっことお味噌汁。
白菜のお漬け物も作ろうかな…。


「…聞いてる?」


秦野さんの言葉に、ハッと我に帰ると、秦野さんが私をのぞきこんでいた。


「すみません、もう一度…」


「だからね、一緒にご飯食べてそのあとは?って聞いてるの」

「そのあと…ですか?えと…少しお話して帰ります」


「え…それだけ?」

秦野さんは眉をぎゅう、っと寄せて怪訝な顔をしている。


「コーヒー飲んだりはします…けど」


「あ、そう…」



何度もへぇ、とかふぅん、とか言いながら、秦野さんは鯖の塩焼き定食をきれいに食べ終えると、


「変なの」


と呟いた。


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