卯月の恋
玲音に引っ張られて、奥の部屋に行くと、そこは広めのリビングダイニングだった。
うちとは違って、小さいながらも、ちゃんと独立したキッチンもある。

私の部屋の2倍はある…。
なんだ、このランクの違いは。

部屋の最奥にダブルサイズのベッドがあり、パソコンデスクやシルバーのラックが置いてある。


ラックにはたくさんの本が並べてあり、それは全てコンピューター関係の書物だった。



「座れば?」


玲音はドライヤーを手にして、白いソファに座り、自分の隣のスペースを指差す。

「っていうか…あれ?仕事は!?」


玲音が、いつの間にかスーツを脱いで、オフホワイトのロングTシャツを着ているのに今さら気付いた。


「休んだ」



玲音は事も無げにそう言うと、突っ立ったままの私の腕を引っ張ってソファに座らせる。


「…や、休んだ?」

玲音はうん、とめんどくさそうに返事すると、ドライヤーで私の髪を乾かし始める。


「雨だし、行くのめんどうだったから」


ぶぉーん、と耳元でなるドライヤーと私の髪に触れる玲音の大きな手のひら。


「あっ、あの、じ、自分でやります…から」


そう言ったのに、玲音は聞こえなかったのか、無視したのか、私の髪を乾かし続けた。
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