卯月の恋
玲音がいなくなった次の日、仕事帰りに私は玲音が働いていたお店に向かった。

会社から少し離れた場所にある、大きな繁華街。
名刺に書かれた住所を頼りに探すと、club Lというお店はすぐに見つかった。


昼間のように明るいけばけばしいネオンが立ち並ぶ通り。

真っ黒いビルの地下一階。

お店の前に、玲音が着ていたみたいなスーツ姿の男の人が二人いて、私がお店に近づくと、すぐに声をかけてきた。
どうやら、客引きをしていたらしい。


「…あの…玲音、という人に会いに来たんです…けど」

玲音に会ってどうするつもりなのか、正直わからなかった。
ただ会いたかった。
顔を見たかった。


玲音、という人間がちゃんと存在していて、生きている、ということを確認したかった。



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