常務サマ。この恋、業務違反です
必要な情報は、高遠さんがどういう人間かなんてことじゃない。
そう窘められたような気がして、私は唇を噛んで俯いた。


「……ごめん。嫌な言い方した」


そう言って軽く首を振る加瀬君に、私は黙ったまま顔を上げた。
そんな私を横から見つめて、加瀬君は苦笑しながら私の髪をクシャッと撫でた。


「ごめん! 責めたい訳じゃない。ただちょっと……本来の目的にベクトル修正したかっただけ。わかってるならいいんだ」

「……ん」


気まずい空気を吹っ飛ばすように、加瀬君がいつもの調子で明るく笑い飛ばす。
つられて笑顔を作りながら、その空気に乗り切れず、顔が強張ってしまうのを感じた。


そんな私に加瀬君は大きく溜め息をついて。
ムニッと。私の頬を指でつねった。


「痛っ!」

「お前なあ。せっかく笑い飛ばそうとしてるのに、マジな顔するなよ。そんな顔されたら、俺だってどう取り繕えばいいかわかんなくなるだろ!」

「ご、ごめん」


ほっぺをつねられながら、どうして私が謝らなきゃいけないんだろう?
それでも加瀬君は両手の指で私の頬をつねりながら引っ張り続ける。
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