常務サマ。この恋、業務違反です
「え……。一週間経つのに?」

「ああ、高遠さんなら、むしろ夜か! お日様の下の健全なランチじゃなくて、濃密な色気の漂う夜のディナー!!」

「やだやだ、その言い方ヤラしいし~っ」


私の言葉尻をとって、勝手に妄想して勝手に盛り上がって行く一流外資系企業の女性社員二人。
一体どこまで妄想を膨らませたのか、二人はほとんど同時に、きゃあああ~と声を上げてから呆れ返っている私をジトッと見つめた。


「って……。もう一週間経つんだから、ちょっとは話題提供出来そうな既成事実とかあったんじゃないの?」


テーブル近くを通り掛かった店員を意識して声を小さくしながら、新庄さんは軽く身を屈ませた。
ヒソヒソ話だから、ぶっちゃけちゃってよ!と言わんばかりの姿勢に、私は肩を竦めて見せる。


「私、ほぼ連日定時出勤定時退社してました」

「えええっ。なんでそんな勿体無いことを……。って言うか、確かに葛城さん、全然雰囲気変わらないよね……」


二人が無遠慮に向けて来る視線に、ほんのちょっとムッとした。
この前の二人の話から推測すれば、それは私がいつまで経っても『垢抜けない』と言われているようなもの。


「私、別に最初っから地味過ぎるって訳でもないと思うんだけど……」


なんだかちょっとショックで、溜め息をつきながらサラダにフォークを運んだ。


「いや、一度でも食われちゃえば、普通ちょっとは期待しない? そりゃ、高遠さんの気持ちを惹き付ける為に、服装だって気合い入るってもの。
今までの秘書さんだって、絶対そこ狙ってたと思うし」


アイスコーヒーのストローをグルグル回しながら、山田さんは目をキラキラさせてる。
< 60 / 204 >

この作品をシェア

pagetop