常務サマ。この恋、業務違反です
『部外者』の加瀬君から見たら、私の報告は、あれもこれも、と可能性を網羅してるだけに過ぎない。
聞きたいのはそんなんじゃなくて、答えに繋がる揺るぎない証拠一つだってことはわかる。


だけど、実際に渦中にいる私にだって、本当によくわからないんだから。


「……それも、合わせて調査中」


実際に、お昼の時間を一緒に過ごすようになってほんの数日で、私に対する高遠さんの警戒が和らいできたのを感じる。
そして、そんな姿を見ていると……セクハラなんて噂が流れること事態に疑問を感じる。
でも、何も知らない加瀬君に話したって、きっと理解されない。


黙り込んだ私に付き合うように少しの間沈黙して、加瀬君の方が焦れたように次の言葉を発した。


「……まあ、それなら続けて。
せいぜい取り入って上手く魅了して、鉄壁の仮面を瓦解してくれれば、俺はそれでいい」

「嫌な言い方。私の行動の全てが、高遠さんを騙す為のものみたい」


そう言い返しながら、違いない、と自分でも思った。


そんなつもりで近付きたいなんて思わなかった。
一緒にランチするようになったのも、後付けのメリットがあっただけで、何かを期待した訳じゃない。


それでも、私がウェイカーズにいる意味は、それしかないから。


「大丈夫だよ。加瀬君に言われなくても、任務はちゃんとわきまえてるから」


相変わらず、心の奥がチクチクと痛む。


それを無視して、私は自分の立場を一層強く意識に刻み込もうとして……。


高遠さんの柔らかい笑顔が胸を過って、グッと言葉を飲み込んだ。


そうして……。
無意識に楽しく作っていたお弁当と、その後の高遠さんとのランチを過ごす時間が、一気にどす黒く汚れていくような気がした。
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