金魚
『友達』
金曜の週末・・・。
「チナは、彼氏つくらないの?」
放課後、親友の里菜と海和子と帰る途中、ファミレスによった時のことだった。
今年から転入してきたばかりの、里菜からの以外な言葉だった。
「えっ。」
千夏は驚き、声が出ない。「シーッ!!里菜そのことは。」海和子は無理無理に、里菜の口を押さえた。
「エーッ何でやの。」
つまらなそうに、口を尖らせ言う里菜。
言おうとする里菜を無理矢理止めようとする海和子を見て、千夏は深呼吸した。
「いいよ、ミワ、私、言うから。」
やっとの思いで口が開いた。
それを見た、海和子は、少し涙ぐんでから笑顔になり、言った。
「いいよ、私が言うから、無理しなくて。」
しばらく、違和感のある沈黙が続き、海和子は続けた。
「んじゃぁ、私はコイツを絞めながら帰るから、お金ココ置いとくね。」
そして、千円札をどんっとテーブルに置くと、里菜を引きずりながら、海和子はファミレスを後にした。
気が付いくと、千円札の下に、手鏡置いてあった。
鏡には、また、気付かない内に泣いている、千夏が千夏自身を見つめていた。

その日の夜・・・。
千夏は、携帯がなっていた事に気が付いた。
携帯には、里菜の名前が表示されていた。
『あ、モシモシ、チナ?』電話に出ると、里菜の明るい声が聞こえる。
「モシモシ、リナぁ?」
『あ、チナ、あの、さっきは、ゴメンナ。』
「えっ。」
『去年の事知らないで、んな事言って、ほんま、ごめんな。』
「そんな事無いよ、リナは知らなかったんだから。」
『んな事無い、ごめんな、チナ。』
「リナは悪くないよ、だって、今年関西の方から来たばかりだもん、それに、いい加減立ち直ろうかなって、思い始めて・・・。」
千夏はそう言うと、次に言う言葉を探した。
『モシモシぃ、チナァ?大丈夫?』
気付くとあの日の事が、脳に焼き付き離れない。
「あ、ごめん。」
『んじゃぁ、もう遅いし切るな、オヤスミ。』
プツン、と電話が切れた。
千夏は、電話が切れても、まだ、携帯を耳にあてていた。
このまま、自分の世界に溶け込みたくなる。

そして、未だ千夏の傷は癒えない。
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