雨上がりの虹のむこうに
「ワタシが力になってやれたらいいが、何分ここはフランスではないからね。ゴンゾウならユウコの力になってくれるよ」
隼人さんと木村さんに案内されて来たのは、ダークスーツをきちんと着こなしたおじさまだった。
髪には白髪が混じってはいたものの、骨格からがっしりしているのか、小柄ながら風格があった。
「優子、じーちゃんだよ」
あわてて席を立ち、お辞儀をする。
「品川優子です」
「久しぶりだね。覚えていないかね? 」
「……そんなこと、ありません」
私がまだ隼人さんやミシェルと何の違いもないと信じていた頃、会長はよく大使に会いに隼人さんを連れて来ていた。
「ご両親のことは残念だったね。それで私は君の願いを叶えてやろうと思ったんだよ」
私と視線を合わせるように見つめてくる瞳は、思いのほか優しい。
「……願い、ですか? 」
「そうだ。君のご両親にはいろいろ世話になっていてね。子供が生まれるのを機に大使館のシェフになってもらうまで我が社のレストラン部門を任せていたんだよ」
「……初めて聞きました。お父さん…何も言わないから……」
こぼれそうになる涙をなんとかこらえて唇を噛み締めた。
「ひとつだけ願いを叶えてあげよう。どんなことだって構わない。この皆藤権造の名前にかけて叶えてやろう」